病気に対する治療効果を高める手段として、治療薬を患部まで的確に運搬する薬物送達システム(以下、DDSと略)があります。
薬剤を患部だけに運搬することができれば、副作用や投薬量の軽減が期待され、DDSは近年注目されています(図1)。 |
DDSの開発では、薬剤を保有しつつ患部まで運搬し、その薬剤を患部で放出するキャリアの役割が鍵となります(図1および2)。
これまでに開発されたキャリアは、患部組織と糖やペプチドが接着する働きを利用し、糖やペプチドをキャリアに付加させていました。 この論文では、ビタミンの一種であるビオチンをキャリアに付加させることで、そのキャリアががん細胞まで効果的に到達することをはじめて見つけました。 これはビオチンが、全ての細胞にとって増殖する際の必須ビタミンであり、がん細胞は正常細胞とは異なり増殖しつづけるため、 より多量のビオチンを必要とすることを利用した方法です。 このことによって、ビオチンを用いたがん治療への新たな可能性が開けたといえます。 |
(紹介者:埼玉大学 工学部 機能材料工学科 水井 究)
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参考文献: | "Targeting cancer cells with biotin-dendrimer conjugates", W. Yang et al., Eur. J. Med. Chem., 2009, 44, pp.862-868. |