近年、病気の原因タンパク質とのみ相互作用することで副作用が抑えられた抗体医薬品の開発が盛んです。
しかし、抗体医薬品にも、患部の深部への到達率の悪さや製造コストの高さ等の課題があり、抗体に代わる医薬品材料として、
抗体の40分の1以下のサイズであるペプチドが注目されています。ただし、一般的に構造が不安定なペプチドは、
特定のタンパク質と強く相互作用することが難しいとされます。 そこで、本論文では化合物を用いて二環構造にしたペプチド(図1左)を利用しています。筆者らは、数十億種類の二環構造ペプチドの中から、 がんの成長、浸潤に関わるウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(uPA)というタンパク質に対して強く相互作用するペプチドを進化工学的手法によって選んできています。 選ばれた二環構造ペプチドは、環状構造でない場合と比較して330倍強くuPAの活性を阻害しています。 これらのことからペプチドの立体構造の安定化が、ペプチドを医薬品として開発していく上で有効であることが示唆されます。 (紹介者:埼玉大学大学院 理工学研究科 理工学専攻 望月 佑樹)
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参考文献: | "Bicyclic peptide inhibitor reveals large contact interface with a protease target", Angelini, et al., ACS Chem. Biol., 2012, 7, 817-821. |